実力主義に徹する
稲盛和夫氏(京セラとKDDIの創業者、JALの名誉会長)は、組織のトップに本当に実力のある人がついているかどうかが重要と述べておられる。ここで言う実力のある人とは、職務上の能力があるだけでなく、人として尊敬され、信頼され、みんなのために自分の力を発揮しようとする人のことだ。
実際、独立してから私はずっと、どうすればビジネスをもっと良くできるか、どうすれば経営者としてもっと成長できるかを、一生懸命考え、それを実践してきたつもりだ。私が経営に携わってきた飲食業は、多くの従業員を必要とする業界なので、従業員のハンドリングが大切になる。従業員に嫌われたり、軽蔑されたりすると、誰が社長でも仕事はうまくいかないだろう。その一方、快適な職場環境と、従業員のやる気を引き出せるくらいの度量が、トップにあれば、従業員も仕事がやりやすくなるだろうと考えた。
どの業種にも共通することだとは思うが、特に中小企業では、必要な備品や資材が足りない、職場の清掃が行き届いていない、機材の破損や故障などのトラブルが多い。だが、中小企業のトップはトラブルが起こる度に、トラブルシューターとしてトップ自らが対応せざるを得ないことが多い。ただでさえ忙しいトップは、なかなか対応の時間が取れずに、結果的に、従業員がストレスを感じる状態になってしまうことが多いのではないだろうか。経営者としての経験がなかった私は、まずは自分のできることから始めてみようと考えた。独立当初から職場の環境整備と従業員間の良好な人間関係の維持に配慮してきたのはそのためだ。
一方、トップとしての器量も大切だが、一朝一夕には身につかない。私はビジネスが拡大するに伴い、トラブルが増えてきた頃、ご縁があって、経営者向けの勉強会の場に参加し始めた。それが稲盛和夫氏の主催する盛和塾シリコンバレー支部だった。そこは、経営のテクニックではなく、経営哲学などの経営の本質論を学ぶ場であった。私は、そこで多くの学びと人とのご縁を得たことに感謝している。自分の学びが深まり、経営者としての自覚が増すにつれ、従業員を信頼し、仕事を任せられるようになり、結果的に、業績が向上し、従業員の定着率が高まったのが勉強の成果と考えている。
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Vol.39 Stick to meritocracy
Mr. Kazuo Inamori (Founder of Kyocera and KDDI, Honorary Chairman of JAL) states that it is important to have really talented people at the top of the organization. A talented person is someone who is not only professionally competent, but who is respected and trusted as a person, and who wants to use their power for everyone.